福島の怖ーい話其の二

◆其の弐 くわず女房…二口女の伝説 ※福島県の話が有名

…むかぁし昔、ある村に、それはそれはけちん坊な男がおった。男は、ものを食わせるのが惜しいからと言うて、嫁ももらわずに暮らしておったと。

そんな男の下にある日、一人の女子が訪ねてきた。女は、「お前様、わしはものを食わんから、どうか嫁にしてくだされ。」と願い出た。男は喜んで女を嫁に迎えたと。
女は本当に何も食わずによく働くので、男は良い嫁を取ったと喜んでおった。じゃが、嫁は飯を食わぬのに、家にある米の蓄えは減っていくばかり。

いぶかしく思った男はある日、仕事に出かけたふりをして、こっそり家の様子をうかがう事にした。すると嫁は、山ほどの飯を炊き、握り飯をたんと作った。「客が来るわけでもなし、あの握り飯をどうするんじゃろう?」
不思議に思いながら男が黙って見ていると、嫁は髪を解いた。すると、後頭部にぱっくりと開いた口が現れた。嫁はその口に、次から次へと握り飯を放り込み、あれだけあった飯を全て食ってしもうた。

おむすびと二口女

これに驚いた男は、嫁を家から追い出す事にした。じゃが、正体がばれたことに気づいた嫁は山姥の姿に戻り、夫を風呂桶に入れたままかつぎ、山に連れ去ろうとした。
夫は山道で頭上の枝に飛びつき、必死で逃げた。男が逃げた事に気がついた山姥は、怒り狂って追ってきたが、男は香りの強い菖蒲の生えた湿原に身を潜めて山姥の追跡から逃れたという。

201408スタイル郡山掲載

201408スタイル郡山掲載