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福島の怖ーい話 其の一

◆其の一 安達ヶ原の鬼婆(黒塚)の伝説

…むかぁし昔のことじゃ。今の福島県二本松市の辺り、安達ヶ原に一人の老女が住み着いた。この婆は岩手といい、昔は京の都で可愛いお姫様のお世話をする乳母じゃった。じゃが姫様は、生まれつき不治の病でのう、口をきくこともできなんだ。医師に診せたが治らない。今度は易者に尋ねた。すると、「おなかの中にいる子どもの生ぎもを飲めば病に効く」 と教えられた。

岩手は姫さまを救いたい一心で、生まれたばかりの娘を置いて旅に出た。京都を出て、遠く奥州まで下って来た。奥州の安達ヶ原に辿りついた岩手は岩屋を宿とし、身重の女子が来るのを待っておった。

長ぁい年月が経ったある晩秋の寒い日のこと、若い夫婦がその岩屋に宿を求めた。生駒之助、恋衣と呼ぶ夫婦でな、この寒い季節に泊まる所も無く、女房は身重の身で難儀しておった。
それを聞いた岩手は、この二人を喜んで泊めてやることにした。その夜のこと、恋衣がにわかに産気づいたものじゃから、生駒之助は、急いで薬を求めに出かけていった。その時じゃ。

岩手はここぞとばかりに出刃包丁を取り出して女に襲い掛かり、腹をさいた。じゃが、女が身に着けているお守りを目にし、岩手は驚いた。それは自分が京を発つ際、娘に残したもの。今しがた自分が殺した女は、他ならぬ我が子、腹の赤子は孫であったのじゃ。

出刃包丁とお守り

知らなんだとは申せ、可愛い娘と孫を手にかけた岩手はおのれの罪に苦しみ続けたんじゃと。遂には発狂し、旅人を襲っては生き血と肝をすすり、人肉を喰らう鬼婆と成り果てたんだと。

201408スタイル郡山掲載

201408スタイル郡山掲載

 

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